「いくら母乳で育てたいとは言え、たいして出ないおっぱいを吸わせるばかりで、ミルクをろくに飲ませてあげないなんて、そんなの親のエゴだよ。あんたのやっていることは、乳幼児虐待につながることだ。」
これは、あるお母さんが1ヶ月健診時に小児科医より言われた言葉です。打ち明けられた時、私はとてもショックを受けました。私でさえショックを受けたのですから、面と向かって言われたご本人のショックは、相当のものだったと思います。本当に母乳が足りていないのならば、ミルクを追加することも当然必要でしょう。しかしこの方の場合、お子さんの体重増加は、20g↑/日のペースでしたのでWHO/ユニセフの基準をクリアしており、決して体重増加不良ではありませんでした。なぜ“乳幼児虐待”と言う言葉が出てくるのか、私にはまったく理解が出来ませんでした。『おっぱいを吸う回数が多いから』、『1ヶ月健診までに体重が1kg増えていないから』、というだけで安易に母乳不足と判断してしまうことには、とても納得出来ることではありませんでした。
人間は哺乳類です。我が子を母乳で育てたいと思うことは、極々自然なことのはず。いろんな方がいて、いろんなお産があり、子育ての環境も様々ですから、スンナリと母乳が出るようになる方ばかりではありません。かなり努力をしてようやく、と言う方もいらっしゃいます。なぜ母乳で育てたいと頑張っている母親の思いを認めてあげられないのでしょうか。子育てが始まったばかりで、とにかく一生懸命にやっていることをこのように否定されてしまうことは、母親の精神衛生上、その後の子育てに多大な影響を与えてしまうのではないでしょうか。とても気がかりなことです。
冷たい言葉で切り捨てるのではなく、もっと母親の気持ちを理解し認め、その思いを受け止めてくださる方々が今後増えることを、私は願って止みません。
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